レッドホースコーポレーション ふるさと納税 首長インタビュー 北海道仁木町佐藤 聖一郎町長2022年7月8日

ふるさと納税で町のファンを増やす。
チャンスをつかむための努力は惜しみません。

レッドホースコーポレーション ふるさと納税首長インタビュー  北海道仁木町 佐藤聖一郎町長

北海道仁木町 佐藤 聖一郎町長

プロフィール

生年月日:1975年10月2日
出身地:北海道虻田郡倶知安町
武蔵大学人文学部 卒業。
武蔵大学卒業後カリフォルニア州ロサンゼルスのFIDMに留学、空間デザインを学ぶ。卒業後帰国し、実父佐藤静雄衆議院議員の秘書をつとめた。2013年(平成25年)、仁木町長に当選。現在、3期10年目。当選当時は北海道で一番若い(37歳)首長であった。

果実とやすらぎの里「仁木町」
一年を通じて様々な果実が楽しめ、町中に甘い香りが漂う。

仁木町は北海道第1位の生産量を誇るさくらんぼやブドウをはじめとする果実の町として有名です。北海道では、果実を栽培できる地域が限られているため、仁木町は隣町の余市町とで北海道の果実の大半を生産しています。果実の生産に適しているポイントとしては、①豪雪だが雪解けが早い ②寒暖差があるの2点。寒暖差があることによって糖度の高い果実ができます。そういった意味でも気候・地形・歴史ともに果樹に適した条件を満たしているのです。

初夏のイチゴから始まり、夏のサクランボ、ブルーベリー、プルーン、秋にはブドウやリンゴなど、一年を通して様々な果物を楽しむことができます。また、野菜はトマトの生産も盛んで、特に仁木町産のミニトマトは自然条件の下で一番おいしいミニトマトが収穫できる夏秋作型では日本一の生産を誇っているブランドトマトの産地です。さらには米も良食味米の産地として有名で、「ゆめぴりか」「ななつぼし」などの北海道米の代表的な品種を栽培しています。また、近年では、ワイナリーの開業も進み、美味しいブドウを使用したワインなど、様々な魅力を楽しむことができます。

北海道仁木町 町の風景

古くから取り組むワインブドウ栽培。それを活かして新たな産業として生まれたワイナリー。

30年以上前からワインの原料用ブドウの栽培が始まり、恵まれた気候条件と優れた栽培技術のもと、その大半を道内はもとより全国のワインメーカーに出荷する等、国内有数のワイン原料用ブドウの産地となっていましたが、景気変動などの影響で下火になり、私が町長になった当時(平成25年)には、生産農家は10分の1程度まで減少していました。また、当時は、町内でワインを生産するワイナリーは1軒しかなく、どこにも負けない良質のブドウが衰退していくことを目の当たりにし、仁木町の良質なワイン用ブドウは他の産地に決して負けないという自負のもと新たな形で攻めることが必要と考え、ワイナリー振興に取組み始めました。従来の企業への原料供給だけでは、なかなか経営的に成り立つことが出来ず自ら栽培、醸造をして販売することにより地元の資源を残すことに繋がり、新たな強みに生まれ変わりました。

そんな中、ご縁があってワイナリーをやりたいという企業とのつながりができ、これを機に新しい産業としてワイナリーが広がるきっかけができました。ここ10年で新たなワイナリーが本町に次々と誕生しております。現在は町内にワイナリーが5軒、ワインブドウの生産農家も20軒ほどに増え、果樹にはまだまだ大きな潜在能力があると感じています。

このように今ある武器を磨き、新たな魅力を創り出すことにより町の大きな可能性に繋がるものと考え、ふるさと納税においても引き続き色々な挑戦をして参りたいと考えております。

北海道仁木町 ワイナリー

「消滅可能性都市」からの脱出を目指して。共生と調和の町づくりを。

私が町長になった翌年の2014年、日本創成会議が発表した「消滅可能性都市」(定義:2010年から2040年にかけて、20 ~39歳の若年女性人口が 5 割以下に減少する市区町村)のリストに仁木町が名を連ねました。それを見て非常にショックを受けました。現実としては受入れましたが、「将来必ずこのリストから抜けてやる」という思いで今までいろいろと施策を仕掛けてきました。

現在、本町も例にもれず人口減少、少子高齢化が大きな課題となっています。そのため、農業分野では労働力不足や後継者不足、地域においては戸数が減り町内会やコミュニティを維持できなくなっています。

農業労働力不足については、外国人技能実習生の受け入れや最先端の技術を活用し、国内最大規模となるミニトマトの自動選別システムを導入するなど対策を講じています。また、地域コミュニティについては、幸いに本町は社会増となっている状況です。ただ、人が増えるということは、元からいる住民と新しく転入してくる住民の間に軋轢が生まれる現象も起こります。それを受けて昨年、総合計画として10か年計画を策定しました。テーマは「地域の共生と調和を大切にする町づくり」。元からいる住民と新しく入ってくる住民が互いに理解し合いながら、町全体が一体となった町づくりをしていかなければならないと考え、策定しました。

多様性を受入れるのであれば住民の理解も必要ですし、また新しく入ってくる人も地域の特性について理解してもらわないと調和の取れたいい関係が築けません。10か年計画はまだ第1歩ですが、魅力的な町づくりのために社会の流れに沿いながら柔軟に変化させつつ理想の姿を目指し、将来的に自立できるような町づくりをしていきます。

ふるさと納税への取組は平成27年度から。導入当初はクレームの嵐。
そして近年、行政・事業者ともに意識改革が進んできた。

ふるさと納税は平成27年度から導入しました。地域内にお金を回す基幹産業がなく、財源がどんどん減少していく中で何とか打開策をと始めました。当初は私が一本釣りで若手職員3名を担当としたのですが、初年度はご祝儀相場もあり1億円超えの寄附を集めることができました。ただ、全くノウハウもない状況で対応していたため、クレームが多かったのも事実です。生産者とのやり取りやクレーム時の対応等、これまで行政職員が経験したことのない業務だったことから担当者はかなり困惑したと思います。一年目の寄附金額から年々減少し続けていくなかで、レッドホース(当時はRHトラベラー)さんのご助言をいただくなど、ポータルサイトを増やしたことが功を奏し、徐々に寄附金額を伸ばすことに繋がりました。途中で諦めずに職員が奮闘した結果だと思います。

返礼品を提供する事業者にしても農産物直売所や観光農園での対面販売には慣れているものの、インターネット上で顔の見えないお客様(寄附者)を対象に商品を提供する機会は少なかったと思われます。特に輸送時の劣化についてのクレームが多く、対応に非常に苦労していました。サクランボは取り扱いが難しい特産品であり、輸送時の状況によっては劣化が生じる可能性があることから、課題解決のために試行錯誤しました。いずれにしても解決策を迅速に講じなければ、事態が悪化しますのでクレームが出ないよう日々努めていますが、発生した際に適切に対応することが重要であるということやリピーターを増やすための取組みを生産者自身が考えるようになってきており、年々意識が変わってきています。

行政としても、事業者や御社に丸投げではなく、親身に対応することを始め、様々な助言をいただく中で一時目減りしていた寄附額も右肩上がりで増えています。それぞれの役割分担が明確となり、さらに協力しながら進んでいっていると感じます。これからさらに高みを目指すには新しい商品開発を進めていく必要があると考え、本年度から「ふるさと納税推進係」を新設し、体制を強化しました。

レッドホースとの取組は令和元年度から。
その間、連携サイトがどんどん増えているので寄附額も増加。本年8月より21サイトへ。

レッドホースさんには、ふるさと納税に本格的に取り組んだ平成27年度にご協力いただいていました。先に述べましたとおり、生産者に近いところでのクレームが多かったため、その後3年間は、生産現場を最も理解している地元の企業に心変わりしました(笑)。ただ、その間、なかなか寄附額が伸びなかったことから、民間活力を活かした運営方法とする方向へ抜本的に見直しをしたことがきっかけで、経験豊富で多くのノウハウをお持ちの御社を選び、令和元年度から改めてタッグを組ませていただきました。

取組当初のポータルサイト数はわずか1サイトでしたが、この8月で21サイトに増やす予定です。御社のシステムの連携先がどんどん増えているので、大きな手間がかからずサイトを増加させることができて助かっています。

それに伴い、寄附額も年々増加しており、令和元年度は約2.5憶円、令和2年度には3.2億円、そして、昨年は4.8億円となりました。本年度は6億円超えを目指しています。

仁木町のふるさと納税寄附額及びポータルサイト数の推移(総務省発表資料よりRHC作成) 仁木町のふるさと納税寄附額及びポータルサイト数の推移(総務省発表資料よりRHC作成)

ひと昔前では、行政が稼ぐということは非常識という認識が当たり前でしたが、人口減少や少子高齢化の影響により地方の衰退が危ぶまれ、地方創生推進のなかで自治体の自立が求められてきました。域外で外貨を稼ぎ、地域に還元することで行財政運営を図ることが常識になりつつある今日、行政職員も次第に自治体の運営から経営することに意識転換が進んでいる状況であります。これまで国から与えられる地方交付税のやり繰りだけを考えてきた自治体が、ふるさと納税制度の活用も一つの手法でありますが稼ぐ力を養うことが当たり前の時代にきているのだと思います。行政としては経験もノウハウもないのでその知識や手法を教えてもらって、町が抱えている商品の魅力をいかに伝えていくかを考えるべきです。

さくらんぼ・シャインマスカット等季節の果実が人気。
将来的にはふるさと納税専用の返礼品開発を。

本町は年間を通じて果実が収穫できます。6月~11月くらいまで、さくらんぼ~プルーン~ブドウ~りんごと時期により出荷できるようにしています。さくらんぼだけでもたくさんの品種があります。返礼品として提供しているのは、「佐藤錦」「紅秀峰(べにしゅうほう)」「南陽」といった人気の3品種と「水門」ですが、それ以外にも仁木町原産のゴールドキングや紅さやか等返礼品には提供せず地元のみで食べたり、主に交配のための品種もあります。そのため、さくらんぼを他の地域より長く楽しめます。この小さな面積で高品質で多品種なさくらんぼを作れるということは、どこの地域にもない大きな武器でもあります。寄附者にも好評で、リピート率も高い返礼品です。

また、本町では昨年、仁木町産のシャインマスカットのうち、厳しい品質基準をクリアしたものを「La・La・Shine(ラ・ラ・シャイン)®」としてブランド化しました。まだまだ収穫量は少ないですが、早く返礼品として提供できるようにしていけるだけの量が確保できればと思っています。シャインマスカットの生産地としては北限とも言われており、また、この冷涼な気候のため病害虫の発生が少ないため、防除の回数も少なく安心して食べることができます。生産組合には収穫したみずみずしさを保ったまま貯蔵できる専用の冷蔵庫を導入し、1月前後まで新鮮でおいしいシャインマスカットを提供することが可能です。12月はふるさと納税のピーク時期ですが本町の返礼品はまだ足りていないと感じています。シャインマスカットはクリスマス等のイベントやギフト等のニーズに応えることができる返礼品として今後、仁木町の目玉になると考えています。

北海道仁木町返礼品画像

さくらんぼやシャインマスカットも大事な特産品で人気の返礼品ですが、これらはふるさと納税の返礼品としてだけでなく市場での流通もしているため、返礼品としての数の確保が容易ではありません。そのため、町としては新しい返礼品の開発が最重要課題だと考えています。ふるさと納税推進係を創設したのはそのためでもあり、「ふるさと納税でしか入手できないもの」を開発することが町にも大きなメリットになると考えます。もちろん、生産者にとっても新しい売上を創り出すことができます。

新戦略作物の第1弾として昨年「ヘーゼルナッツ」の植栽をはじめました。ヘーゼルナッツは国内で流通している9割以上が海外産で、国内産としてアイスクリームやスイーツ、調味料等の加工品として返礼品を開発すれば十分にニーズがあると思っています。木が成長するのに4~5年かかるのでその頃が楽しみです。ヘーゼルナッツを選んだ理由としては、国内産が少ないこともありますが、何より栽培に手間がかからないことも大きな要因で、耕作放棄地等を利用して面積を増やしています。町としてはいろいろ挑戦していきたいのですが、リソースに限りがあるので、選択と集中をしていく必要があると思っています。今後も新たな「ここでしか手に入らない」ふるさと納税専用の返礼品の開発を進めていきたいと思います。

「北海道ブランド」の強みを活かして、さらに仁木町との関係人口を増やしていく。

スーパーなどの陳列棚に多くの商品が並んでいる状態で、国内産か海外産かを意識して購入する消費者は増えてきていますが、産地名まで細かく意識して買う人は稀だと思います。しかしながら、「北海道産」というのはブランド力としては高いものがあります。ただ、そのブランド力に埋もれているのが実態であり、さらに産地名(自治体名)まで認識している消費者はほとんどおりません。

近年、ふるさと納税の普及により産地に対する認知度は向上し、同じ種類の商品が並んでいるとしても産地名を意識して購入される消費者が増えてきていることは自治体にとっても大きな強みになっているものと受け止めているところであります。またふるさと納税を利用するにあたり、多くの寄附者が津々浦々の特産品を目にする機会が増えたことも大きいと考えます。

今はまだ「仁木町」を知らない人の方が多いと思いますが、ふるさと納税は町の名前を知ってもらうきっかけになると考えています。北海道ブランドを活かしながら、入口は「さくらんぼ」だったり「シャインマスカット」だったとしても、その特産品を通じて「仁木町」という存在を知ってもらうことで、仁木町に行ってみたいと感じていただき、ふるさと納税を通じて本町の関係人口を増やしていきたいと考えています。

ふるさと納税首長インタビュー  北海道仁木町 ゆめぴりか

地域の持つ力を発揮し、仁木町のファンづくりを強化。「三方(寄附者・住民・事業者)よし」の精神を醸成。

レッドホースコーポレーション ふるさと納税首長インタビュー  北海道仁木町 佐藤聖一郎町長

令和4年度目標額として6億円以上を目指しています。今後ももちろん寄附額としては高い方がいいのですが、いかに多くの寄附を集めるのかということよりも、それぞれの地域が持つ力をいかにして発揮することができるのかが重要であり、その力が評価されることが寄附や集客に繋がるものと思います。リピーター(ファン)が増えるということは、商品の価値は勿論のこと、地域に対しても期待や関心を持ってくれているのだと受け止めるべきであります。商売でもお客様を第一に経営されているところは良い結果に繋がっているのと同じく、行政も同様にそのような認識を持ち、多くの方々に喜ばれる町づくり、モノづくりをしていくことが持続可能な地域づくりになるものと考えます。そのための意識の醸成が必要です。寄附金を集めることより、寄附者の気持ちに寄り添った寄附者にとって魅力的な商品開発に重点を置きたいと考えています。ふるさと納税の魅力は寄附金だけではなく、新たなモノづくりや地域づくりへの影響力にあると思います。

そのためには、行政としては努力が必要です。努力を惜しまず、積極的にチャンスをつかむことができれば、結果として住民にも還元でき、地域の発展、住民の幸せにつながります。

「寄附金が集まる」→「新しい事業が生まれる」→「人を呼び込む要素をたくさん作れる」→「寄附金がさらに集まる」といった好循環を生んでいくことができると考えています。その仕組みをふるさと納税で集まった寄附金で行うことができれば、寄附者・住民・事業者すべてがWin Win Win=「三方よし」になると思います。

ふるさと納税はシティプロモーションの有効な手段。

これまでふるさと納税制度を巡って自治体間の返礼品による過度な高額競争や税制負担の不平等が問題視されてきたことは事実です。都市部に集まる金を地方に一部分散する目的でこの制度が始まったはずが、都市と地方の税金の奪い合いになっているのではという異論が増え始め、地域の特産品ではないものを返礼品として出すことは是か非かという議論は多くの地域で繰り広げられたと想像します。制度としては、以前と比較しても成熟度は増してまいりましたが、今後につきましても寄附をする側、寄附を受ける側、誰もがメリットある仕組みづくりをしなければ長続きしません。

これから先、もしふるさと納税が衰退したとしても域外に地域の魅力を発信することができるツールは必要不可欠で、昨今、ネットショッピングが広く普及し、コロナ禍でさらに需要が高まり、スーパーやデパートへ足を運んで実物を確認せずにネットだけでショッピングを完結する人が増えました。これだけスマホの保有率が高まり、スマホひとつで簡単に買い物や予約ができる日常のなかで生活者の消費スタイルが変わり、多くの商品やサービスを提供する側も新たな経営概念を持ち、これまでとは違う販売方法にシフトチェンジしています。自治体も時代に即した手法を選択し、より効果的に魅力を発信していくことが必要です。従って、寄附を受け併せて地域のPRができるふるさと納税の存在価値は大きいものがあると率直に感じています。

ふるさと納税を通じて社会貢献の形が変わってきた。
制度をうまく活用してさらに魅力のある町づくりを。

レッドホースコーポレーション ふるさと納税首長インタビュー  北海道仁木町 佐藤聖一郎町長

ふるさと納税を通じて寄附するという認識が当たり前の社会になってきたと感じています。「何か社会の役に立ちたい」という思いを持つ人は多くいますがボランティア活動に参加するには高いハードルを感じている人も返礼品を通じて地域に寄附をするというこの制度を使うことによって、寄附行為が当然の行為として認識されることにより地域貢献や社会貢献意識が向上し、新しい社会参加の形ができてきたのではないかと感じます。寄附で貢献できる新たな形での地域との関わりです。ふるさと納税はそういう意味での受け皿になっているのかもしれません。

近い将来、開通予定の高規格道路が完成すれば、本町はニセコや倶知安まで約30分、札幌まで約40分という北海道の主要都市の中間地点となり、北海道回遊の重要な起点となることも考えられます。そのために町の魅力をさらに高めるとともに受け入れられる場を作る必要があり、国内からも海外からもたくさんの人々が集まる魅力ある町づくりを推進していきます。

ぜひ、仁木町にお越しください。

雲雲

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