レッドホースコーポレーション ふるさと納税 首長インタビュー 北海道洞爺湖町下道 英明 町長2023年5月16日

町外から見ていたからこそわかる洞爺湖町のポテンシャル。観光と一体化したふるさと納税の取組で、交流人口増、定住人口増に挑戦。

レッドホースコーポレーション ふるさと納税首長インタビュー 北海道洞爺湖町 下道 英明 町長

北海道洞爺湖町 下道 英明 町長

プロフィール

生年月日:1961年(昭和36年)
出身地:洞爺湖町(旧虻田町)
温泉小・温泉中・虻田高校と高校まで地元で過ごし、大学は成城大学経済学部に進学。卒業後は証券会社に勤務し、国内営業・アメリカ留学を経て、シンガポール駐在員を務める。平成8年に帰国し、札幌市内にて学習塾を経営し、平成21年、約30年ぶりに故郷洞爺湖町へ戻る。平成22年より洞爺湖町町議会議員(4期活動)。令和4年、洞爺湖町長に初当選、現在1期目。

農家と漁師と商人が共存するまち。開拓のDNAを受け継ぎ、未来へ繋ぐ。

洞爺湖町は、平成18年(2006年)3月27日に旧虻田町と旧洞爺村が合併してできた町で、北海道南西部に位置し、湖(洞爺湖)と山(有珠山)と海(噴火湾)の3つが地形的な特徴です。旧虻田町は主に観光業と漁業が盛んで、対して旧洞爺村は農業に軸足が強かったため、合併によって農家と漁師と商人が一緒に生きるまちとなりました。

本町の課題の一つは、地域性や歴史を見ながら、これを融和していくことであると考えています。旧洞爺村は主に四国・讃岐からの入植者が多く、旧虻田町は主に東北からの入植者が多いです。明治維新以降の開拓の歴史のあるまちなので開拓のDNAがしっかり根付いている地域です。そのDNAを受け継ぎ、未来に繋いでいくことが重要だと考えます。

ユネスコ世界ジオパークと世界文化遺産、2つの世界的な遺産を有する洞爺湖町。活火山の恵みが町の産業を支える。

ふるさと納税首長インタビュー北海道洞爺湖町

洞爺湖町は平成20年(2008年)の北海道洞爺湖サミットの開催地でした。その翌年には「洞爺湖有珠山ジオパーク」として日本初のユネスコ世界ジオパークに認定されました。また、令和3年(2021年)7月には、「北海道・北東北の縄文遺跡群」として構成遺跡である「入江貝塚」、「高砂貝塚」が世界文化遺産に認定されました。人口8,200人の小さな町に、ユネスコ世界ジオパークと世界文化遺産という2つの世界的な遺産があるのは国内でも稀有な例だと思います。

この基盤となっているのは有珠山の噴火です。1910年の噴火が洞爺湖温泉の起源になっていたり、1944年頃には昭和新山が隆起するなど、およそ20年から30年の間隔で噴火しています。災害もありますがその恩恵としての温泉や地形、また、その土壌を生かした様々な農産物や海産物の収穫などが町を支えています。

「遠くから見たふるさと」と「近くから見るふるさと」、両方知っているからこそできる町政を行う。

ふるさと納税首長インタビュー北海道洞爺湖町

私は旧虻田町に生まれ、高校まで地元で過ごしました。大学進学で上京し、証券会社に就職し、その後留学試験を受けアメリカのオレゴン州で国際経営学を学び、会社に戻ったあとは1991年、湾岸戦争の勃発と同じ頃シンガポールに行きしばらく駐在しました。株価の低下と共に会社を退職し、札幌で14年間学習塾を経営。その後、母の体調もあり洞爺湖町に帰ってきました。翌年、町議会議員の補欠選挙に出馬し町議会議員となり、議員として活動しながら、英語や広東語を生かして観光施設を経営する同級生のクマ牧場で働いたり、同級生に勧められ、今後のまちづくりなどの勉強として道南バス洞爺営業所の貸切と運行管理者などもしていました。10年ほど続けた後、昨年、町長に就任しました。

地元に戻る一番のきっかけとなったのは、2008年の洞爺湖サミットでした。「自分の田舎でサミットがあるんだ!」と純粋に驚き、町についてもう一度見直す機会となりました。さまざまな地に赴任した経験からも、当町のポテンシャルの高さを改めて感じました。地元を離れた30年間に「遠くから見たふるさと」と帰ってきてから14年間の「近くから見るふるさと」という視点で町議当時は町民の皆様にさまざまな提案をしていました。

 

洞爺湖は噴火湾沿いの観光地としては有名ですが、2030年の北海道新幹線の倶知安町までの延伸でさらに人を呼び込むこともできると考えています。例えば「冬はニセコ、夏は洞爺湖」というように地域をまたいでアクティビティを楽しんでもらうこともできるのではないかと。観光圏としての伸びしろが多いので、いろんな方々に移住・定住、交流人口として来ていただければと思います。
外から見て感じていた方向性やある程度のビジョンがありましたが、それはここに戻って来て確信に変わりました。それらをこれからの町政にも生かしていきたいと考えています。

戻りつつある観光産業。
LCCの増便による海外からの旅行者の増加が見込まれる。
人手不足は泊食分離で乗り切る。

ふるさと納税首長インタビュー北海道洞爺湖町

洞爺湖町の主力産業の1つである観光。コロナ禍の水際対策の緩和や国内の行動規制緩和によって、ようやく以前に比べ7割程度戻ってきました。特に去年の10、11月ぐらいからは海外からの観光客が非常に増えています。メインは韓国の方々です。これは千歳空港へのLCCの乗入れが大きく影響しております。台湾、タイ辺りも増えてきたと感じています。5/8からコロナが5類に引き下がるので、6、7月の千歳空港のLCCを見ると倍増しています。メインは韓国と台湾、これから北京や上海が動いてきそうです。

観光業の人たちとの話ではとにかく「人手が足りない」という意見を聞きます。現状では8割稼働で予約を止めているそうです。ベッドメイキングや夕食の対応が追いつかない状況です。泊食分離をせざる得ない感じです。その上、飲食店もコロナ禍で閉めてしまったところが多く、今ある飲食店はオーバーブッキング状態になっています。結局、観光客がコンビニやスーパーでお酒やおつまみを買って駐車場で乾杯しているのを何度も見ました。これからはさらに盛り上がってくると思うんですが、働き手がいないということでフルスペックでの稼働ができないというのが現実です。コンサドーレ札幌との提携や海外の日本人学校への働きかけなどの対策は講じていますが、すぐに解消とはいかず、しばらくは我慢しながら進んでいくしかない印象です。ただ、「こんなに混んでて、北海道どうなってんの」とリピーターが来なくなってしまっても困るので、観光関係の応援は引き続きしていかなければならず、今後も対策を取り続けたいと考えます。

とはいえ、しばらくは泊食分離が続いていくと思います。そのためには、飲食店を増やしていく必要もあります。お店をやりたいという若い方などに最初の1~2年は町が家賃の面倒をみる「チャレンジショップ」という制度を設けています。近隣のニセコエリアは地価や人件費の高騰で新しく経営参入が厳しい状態なので、そういったニーズを当町に取り込んでいければと思っています。

内外の認識格差を縮め、環境を生かしながら新たな観光資源を作っていく。

ふるさと納税首長インタビュー北海道洞爺湖町

観光サポートとしては、今年も「洞爺湖ロングラン花火大会」を開催します。4月28日から10月31日まで毎夜20:45~約20分間、洞爺湖温泉湖畔に花火を上げます。地元の人にしてみれば、毎日のことなので日常化しているんですが、道外の方々や、いろんな観光関係の方と話すと「毎日花火が観れるのすごいよね」と言われます。中の人と外の人の認識の違いがわかったので共有していかないといけないですね。

ふるさと納税首長インタビュー北海道洞爺湖町

洞爺湖町は、観光先として行きたい町ランキングの上位ではないので、今後はターゲットを絞りながら認知を広げていきたいです。これだけの環境にもかかわらず、「学べる、楽しめるエリア」というPRが不十分なのかなと思います。コロナ後の観光としてアウトドアでの観光が求められると考えています。洞爺湖中島では、自然を楽しみながら散策が出来るコースもあります。
環境を生かしてエコツーリズムとグリーンツーリズムが繋がった時に初めて大きなサステナブルツーリズムいわゆるSDGs活動をしながら観光できる環境をつくることができると考えています。環境や自然に関心の高い人たちの集客を進めていければと考えています。

子育て支援のための、町の未来のための、ふるさと納税は重要な財源。

地域の最も大きな課題は少子高齢化対策です。現在、65歳以上の高齢者が人口の43.5%、後期高齢者と言われる75歳以上が24%前後で、他の地域と同じく「働き手」といわれる生産者人口の比率が低い状態です。その対策として、定住人口の増加のために子育て支援を充実させています。私自身、昨年の選挙では子育て支援の拡充と稼げる行政というのを前面に打ち出し町長となったので、その公約を実行しているところです。

町長になってまず手を付けたことの1つが出産祝い金の倍増です(第一子:5万円➡10万円、第二子:7万円➡15万円、第三子:10万円➡20万円)。担当課からは「日本のベスト10に入る金額」と言われています。また、保育料の完全無償化を実施し、今年の8月からは、高校生までの医療費を無料化していくことが決まっています。その他にも中学校の制服とジャージの1着目分は助成するなど、子育ての各段階を応援しています。子育て支援が勉学と教育環境で二極化している中で、まずは洞爺湖町には自然があるので、子供をのびのび育てたいという保護者の思いを掴んでいき、さらに支援を充実させたいと考えています。

ところで、当町がふるさと納税制度に本格参入したのは平成28年度(2016年度)からでした。当時からレッドホースさんには、ふるさと納税に関する業務、商品選定やポータルサイトへの掲載、発送手配、寄附者対応まですべてを委託しています。実際、本町の寄附額のおよそ8割が貴社経由のサイトからとなっています。ただ、これまでは当町の中に専任の担当者がおらず、町内事業者と連携しての返礼品開発や品数の増加、ふるさと納税に関して分析もできなかったことから、対応が遅れることにより思うように納税額が増えない状況にありました。子育て支援のさらなる充実等の実現を考えると財源確保の大きな手段となるふるさと納税を片手間にやることは厳しいと考え、昨年8月に専門部署を立ち上げました。貴社と二人三脚で取組んでもらってます。新しい部署ができた8月からの半年の成果としては寄附額が前年比150%に増加しており、商品数も100品ほど追加、事業者も15社程度増えています。

貴社と取り組んでからは、寄附額も右肩上がりで伸びています。お礼の品が確保できず伸び悩んだ時期もありますが、これまで好調です。結果が出ているということはうれしいことです。

 

洞爺湖のふるさと納税寄附額・寄附件数(総務省発表資料よりRHC作成)洞爺湖のふるさと納税寄附額・寄附件数(総務省発表資料よりRHC作成)

私自身は、ふるさと納税は恒久的な財源ではないですが、本格的にやれば持続可能な財源となると考えています。4月からは担当者をさらに増やし、専念してもらう予定です。スキルアップや商品開発についても目標を立てて、地域を理解し、なおかつコミュニケーションリテラシーの高い人材にしていきたいと考えています。

洞爺湖町にしかできない返礼品の開発を。ここでしかできない体験を町長自ら宣伝していく。

ふるさと納税についてのデータを見るとリピーターの割合が多く、SNSの発信などウェブを使った集客やマーケティングが必要だとわかりました。証券会社や塾経営でのマーケティングがふるさと納税のマーケティングに似ていると感じています。ニーズがどこにあるのかということと地域の特性を考えると、今までのただホタテやシャケなどの“モノ”を提供するだけでなく、サービスの提供も大事になると考えています。海産物だけでは、オホーツク地域の自治体ほど量が確保できるわけではないですし、どんどん厳しくなっていくのではないかと思います。

当町の返礼品の中には、ヘリコプターの空中遊覧や洞爺湖サミットで使用したホテル(ザ・ウィンザーホテル洞爺)の宿泊チケットなど、従来のマスツーリズム(大衆)ではない「あなただけのための」というターゲットを絞った仕掛けも提供しています。また、4000人以上が集まる洞爺湖マラソンのスタート地点付近のパーキング権利を返礼品としたり、こういった形のサービスに対する返礼品を提供し、人気が高まっています。

   

ふるさと納税首長インタビュー北海道洞爺湖町ザ・ウィンザーホテル洞爺

ふるさと納税首長インタビュー北海道洞爺湖町洞爺湖スカイクルージング

今年6月に開催を予定している2日間で延べ7万人が集まる「TOYAKOマンガアニメフェスタ」というイベントでもふるさと納税のアピールをしながら、ソフト面での対応ができればと思っています。私自身もドラゴンボールの亀仙人の格好をしてオープニングに参加する予定です(笑)。実は先に話をした洞爺湖マラソンには、同じドラゴンボールのクリリンの格好で10キロ走る公約をしてしまいました。テレビに出演した際、ノリすぎてついつい言っちゃったんです(笑)。そういった人の集まる場所で体験できる返礼品を開発するとともに、もっともっと町長としてふるさと納税の宣伝を繰り広げて行こうと思っています。

今後は観光名所である縄文遺跡群やジオパークも返礼品として開発していきたいと考えています。そういうソフト面での返礼品開発で「やっぱり洞爺湖町のふるさと納税すごいよね」といわれるように、エッジの効いた対応ができればと思っています。

先日、若手起業家と話す機会があり、ザ・ウィンザーホテル洞爺の高額宿泊チケットを返礼品にすることを話すと「もう冷蔵庫もいっぱいで、モノの返礼品を探すのが大変だったから、ぜひ!」と好反応でした。そういうこともあり、担当課長ともっと高額な返礼品もありではないか、モノやマスツーリズムではない、思い出に残ることを行政としてご提案できないかなと話をしています。高額納税者を当町のファンにすることで「次何やるのかな」と思ってもらえるように、ターゲットを絞った返礼品開発もやっていけるようになれればと検討していきます。

ふるさと納税を通じて交流人口を増やす。成功も失敗も大切な財産です。

ふるさと納税首長インタビュー北海道洞爺湖町

昨年は、町内唯一の高校である虻田高校を支援する会補助金としてふるさと納税による寄附を活用させていただきました。虻田高校は1学年1間口の「地域連携特例校」として、少人数の学校教育が行われており、就学費用の一部補助による保護者の負担軽減や、部活動・地域学習(生徒による遊覧船のガイドなど)の助成を行い、次世代を担う人材を育成しております。そんな活動も併せるとふるさと納税の財源も含めた子育て支援の予算は4,800万円となりました。

また、当町の洞爺地区においては、日用品や生鮮食品を取り扱う店舗がなく、公共交通機関はバスのみのため、通学や買い物が困難に感じている方が多くいらっしゃいます。そんな方々を支援するため、買い物支援バスの運行や、通学費助成を行うなど、住み慣れた地域で生活を続けられる仕組みづくりを、いただいた寄附金を活用して取り組んでおります。

その上で、寄附者の皆さんとのつながりを継続することに重点を置いています。ふるさと納税はポテンシャルや伸び代があって、切り口は「稼げる財源」だけでなく交流人口の拡大などにも最適だと考えています。ふるさと納税の寄附額も大事ですが、1回だけの寄附ということではなく、寄附いただいた方が町に来てもらうことで交流人口を増やしていく、来てもらって繋がることによって洞爺湖町をポテンシャルある地域だと知ってもらいたいと思っています。当町ではふるさと応援団といって、洞爺湖町の魅力を発信していただけるかたを「応援団員」に任命しています。定期的なメールマガジンの配信を行ったり、イベントに参加いただいたり、PR活動に協力いただいています。寄附金額多くないけれど、「ふるさと納税利用してるからたくさん来てるよね」というトータル的なベネフィットを考え、取り組むべきだと思っています。その点ではふるさと納税はまだまだ可能性があると感じています。

定住移住にも間違いなくプラスになってくるといます。それも踏まえるとふるさと納税を通じた本当の目標というのはやはり当町に来てもらう、応援団になってもらう、ここでアクティビティやサブカルチャーを楽しんでもらう、勉強のために北海道・北東北の縄文遺跡群をたずねてもらう…そういう人を1人でも多く増やしていくことだと考えます。そのための返礼品をどんどん開発していきたいと思います。ふるさと納税は当町へ来るための仕掛けづくり。そして、それを経て、また来たくなる町になっていき、さらには当町に定住したいと思ってもらえることがその先の目標だと思います。

そのために、貴社には全国の様々な自治体などから収集されている情報、特に「失敗事例」をご提供いただきたいと思っています。失敗事例からの気づき、学びを蓄積していくことは行政マンにとっても貴重な財産・データーベースになってくると思います。成功例だけを追いかけた時、失敗した際の挫折感によって「もういいや」ってなってしまう場合も出てきてしまうと思うので、失敗例の中から「この失敗、うちならいけるんじゃない?」という創意工夫ができればと考えています。むしろ失敗は宝の山だと考えています。これからも、貴社といろいろ協力して取り組んでいきたいと思います。

雲雲

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